恋猫

 「分かりました」


 淳ノ介も腹を決め、着物を脱いで布団の中へ。


 化身した篠は、今まで何度かオス猫からちょっかいを出された事があった。首を噛み付かれ、押し倒され、あわや寸前という所で体を捻り、何とか、危ない所を逃れて来た。

 化身した篠は、死んでも猫の子は生みたくなかった。生むなら淳ノ介の子供だ、と固く心に決めていた。
  

 だいたい、猫の交尾は味気無い。後ろからさっさと突付かれると、それで一巻の終わり。気分もへったくれも無い。


 だが、今度は違う。大きく違う。抱き合って愛を確かめ合う浮世絵の恋絵巻。そこは、桃色吐息の桃源郷。


 篠は大きな大きな期待に胸をときめかせていた。
 淳ノ介が布団に入って来た。


 篠は、目眩しそうな宇宙を遊泳していた。
 猫のオスと、人間の男とは、地と天ほどの開きがある。


 人間の男は、まるで魔術師。
 篠は想像を絶する宇宙空間を、ゆらゆらゆらゆらと痺れるように漂っていた。





 
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