恋猫

 「そういう事になるかと思うが・・・。下手人が猫では、捜しようが無いというもの。いかがしたものか」


 尚八郎は、困ったという顔をした。
 淳ノ介は尚八郎と、銀次のやり取りを聞いていた。


 「猫か、別の獣に噛み殺された・・・」


 淳ノ介には、その言葉が衝撃的だった。


 「猫が篠さまを殺して、篠さまに成り代わるとしたら・・・。化け猫・・・・・・。まさか、今の世にそんな事があるはずが無い」


 淳ノ介が突飛な事を口に出し、慌ててその言葉を打ち消した。


 (でも、あの時の篠さまは可笑しかった。まるで、人が違った様に思えた。扇子を取りに戻って来た前と後では、がらりと人格が変わってしまった。もし、あの時、猫が篠さまに成り切っているとしたら・・・。あの変わりようも、頷けるというもの)


 (まさか。そんな事があろう筈が無い)


 突飛な考えを打ち消したものの、淳ノ介の心の中では、突飛な推理が、まだまだくすぶり続けていた。






 
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