恋猫

 尚八郎と銀次の二人は、死体とその回りを丹念に調べ上げると、死体にござを被せた。そして、蔵乃進と淳ノ介に目撃証言を聞き始めた。


 蔵乃進には、篠が扇子を忘れ、楓家の屋敷に戻るまでの経緯を。尚八郎が質問をし、銀次が証言を書留帖にしたためた。


 続いて、淳之介が質問を受ける運びに。


 「淳ノ介さまは、篠さまを楓家の屋敷から、五谷家の屋敷まで、寄り道もせず、真っ直ぐに送り届けなさったのですか」


 尚八郎が淳ノ介に鋭い質問をした。


 「いいえ、寄り道を致しました」
 「いったいどこへ、寄り道なさったのですか」


 「お恥ずかしい話ですが、川沿いの出会い茶屋に寄り道致しました」


 淳ノ介が、少し照れ臭そうに呟いた。

 

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