恋猫
鈴が美化を抱き締めていると、するりと抜け出して、美化が逃げ出した。
「あら、どうしたの」
鈴が美化の動きを目で追っている。
(こっちにおいで。いい所に案内して上げるから)
美化が鈴を見て手招きをした。そして、鈴の前を振り返り、振り返り、ゆっくりと歩き出した。
「どこに行くの」
「猫ちゃん、待ってよ」
「待ってよ」
鈴が美化の後を追い掛けた。
美化は、母屋から店に鈴を先導すると、そこで止まり、店内を眺め回した。
客は、比較的に右側に集まっている。
(店を通って外に出るには、左側の隅からにしよう)
奉公人に引き止められないよう細心の用心をしながら、美化は凄いスピードで走って外に出た。