ヴァージニティー
床のうえにビニール袋を落とした音を聞いた。

夕子が自分の首の後ろに両手を回してきた。

「――んっ…」

お互いを深く、深く、貪りあう。

「――あっ、ちゃ…んあっ…」

自分の名前を呼ぶ夕子に、
(“朝人”だってば)

朝人は心の中で呟いた。

こんな時も“あっちゃん”はひど過ぎではないだろうか。

「――夕子…」

唇を離すと、朝人は夕子の耳を攻めた。

彼は自分の弱いところを知りつくしている。

何年もの時間をかけて、朝人に愛された躰だ。

おかしくも何ともない、それを当たり前だと思っている。
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