いつか見る青
ご近所さんに配慮しているのか、音量はかなりしぼられていて、数メートル離れたここからだとギリギリ聞こえるか聞こえないかくらいだったけれど、それでもあの独特の抑揚のついた声はしっかり耳で確認できた。



民さんに事前に教えられていなくても、洩れ聞こえてくるメロディはラジオ体操であるとすぐに分かったに違いない。


これって、リアルタイムで放送してるんだろか?


それとも録音?


そんな疑問を抱きつつ、私は声をかけるタイミングをはかりながらおじいちゃんに近付いて行った。


だけど私の気配に気づいたのか、こちらから呼び掛ける前におじいちゃんは振り向いた。


「おお、葵早いな」


「おはようございます」


「おはよう。もう少し寝ていても大丈夫だぞ。年寄りに合わせる必要はないんだからな」


「いえ。私はいつもこれくらいの時間に起きているので……」



体操しながら話すおじいちゃんの動きを妨げないよう、3、4歩離れた位置で立ち止まり、私はちょっとドキマギしながら切り出した。


「あの、急なんですが、実は今日、神崎さんが携帯の契約に付き添ってくださる事になったんです」
< 110 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop