いつか見る青
言いながら、ハンカチでそっと両目を押さえる。


「……母さん」


そんな母親の姿を直視しないよう顔を正面に向けたまま、未来君が淡々と言葉を発した。


「どうでも良いけど、そろそろ午後の診察始まっちゃうよ。多少遅れても良いとは言われてるけど、なるべく早く帰った方が良いんじゃない?」


「え?あら、いけないホントだわ」


今日子さんはリビングの壁に掛かっている時計を見ると、あわてふためきながらハンカチをバッグに仕舞い、代わりに携帯を取り出した。


「タクシー呼ばなくちゃ」と呟きつつ、ボタン操作をする。


相手とのやり取りを終えバッグに携帯を仕舞うと、今日子さんは改めて私に視線を合わせた。


「何だか色々ごちゃごちゃ言っちゃったけど、ようするに、碧君や瑠璃さんの分まで、私達と仲良くしてねって事を言いたかったの」


「はい。こちらこそ」


「そうだ。良かったら今度、葵ちゃんがウチに遊びに来てよ。木曜と土曜の午後と、日祝は休診日だからさ」


そして今日子さんは、ウィンクしながら、おどけた口調で続けた。


「私の自慢の旦那、見せてあげるわ。しょうゆ顔の、すっごいイケメンなんだから!」
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