いつか見る青
突然の提案に、キョトンとする私に民さんは微笑みながら解説する。


「今は私が使わせていただいてますけど、昔は瑠璃ちゃんがその部屋を使っていたんですよ」


「えっ。そうなんですか?」


「ええ。私はもともと住み込みではなく通いの家政婦でしたから。と言いますか、瑠璃ちゃんも最初は通いの筈だったんですけどね」


お母ちゃん本人からもお父ちゃんとの思い出や若い時の話は聞いていたけれど、断片的なものだったし、その歴史のすべてを把握できていた訳じゃない。


民さんはまだ私が知らなかった部分を補う、とても興味深い話をしてくれた。


おじいちゃんの代になってから、ミヤマ文具店は飛躍的に業績が伸びた。


それを受けて「我が社の発展は消費者の皆様のおかげ。ぜひこの感謝の気持ちを還元させていただきたい」ということで、おじいちゃんは東京やその近郊の福祉施設、孤児院に、毎年文房具の寄付を始めた。


その中にお母ちゃんが暮らしていた孤児院があったのだ。


そこは高校を卒業したら出て行かなくてはいけない決まりだった。
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