いつか見る青
「はい。特に私、お母ちゃんの煮込み料理が大好物で…」

「お母ちゃん?」


それまで無言で、視線さえ逸らしていた叔父さんが、突然会話に加わってきた。


「何だよそのイナカもん丸出しのダッセー言い方。どういう教育されて来たわけ?」


それまで浮かれていた私は、冷笑しながら発せられた叔父さんの言葉に、心臓が締め付けられたようになってしまった。


「紫!」


反応できない私に代わって、おじいちゃんが言葉を発する。


「お前こそ、そういう人を見下したような、品の無い言い方はよしなさい」


そして私の方に向き直った。


「すまなかったな、葵」


「い、いえ……」


叔父さんの、無言でフイッと顔を逸らす仕草が目の端に映った。



「ただ、確かにその呼称はあまり感心しないな」


おじいちゃんは穏やかながら、威厳のある声音で言葉を紡ぐ。


「友人や身内の前ならまだしも、お客様がいるんだから。それに相応しい言葉遣いをしなさい」


「…はい。すみませんでした」


いつもだったらきちんと「母」って言うんだけどな。
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