いつか見る青
「二人には本当に済まない事をした。さぞかし苦労したことだろう」


その言葉に、私は胸が熱くなった。


おじいちゃんがどれほど私達の事を思ってくれていたか、痛いほど伝わって来たから。


もう、それだけで充分だった。



「そんな、やめて下さい。私自身は、苦労なんて感じた事はありません」


震えそうになる声を整えて、私は極力明るい声を出す。


「陽気でタフな母と一緒に、毎日楽しく過ごしていました。幸せな16年でしたよ」


私の言葉に、おじいちゃんは顔を上げ、静かに微笑んだ。


「そう言ってもらえると救われる」


そして一呼吸置いたあと続けた。


「実は4年前、家内に癌が見つかってな……」


ふいうちに、鼓動が跳ね上がる。


おばあちゃんの病気は決して軽いものではないと予想はしていたけど、いざ具体的に病名を告げられると、やはり衝撃を受けた。


「中々厳しい状況ではあったものの、幸い病巣を取り除く事ができて、その後は経過観察するという運びになった。命は取り止めたが、しかし、その時につくづく思ったんだ。人間はいつ、どうなってしまうか分からないと」
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