いつか見る青
おじいちゃんは、年齢を感じさせないしっかりとした力強い足取りで食堂を出て行く。


民さんもすでに席を立ち、部屋の隅に置いてあったワゴンへと近付いていた。


それをテーブルの傍まで引いて来ると、まずはおじいちゃんの席の前にある食器を片付け始める。


「ごちそうさまでした」


「いえいえ。お粗末様でした」


民さんに声をかけたあと私も立ち上がり、目の前の食器を運びやすいように重ねた。


「あら、葵さん。そのままにしておいて下さいな」


「いえ、自分の食器くらいは自分で洗おうかと思って……」


「まぁ、とんでもないです。それは私のやるべき事なんですから、どうぞお構いなく」


「でも……」


すると神崎さんも立ち上がり、私を制するようにやさしく肩に右手を置いた。


「葵さんはいつも、お家でお手伝いをなさっていたんですね?」


「あ、はい」


「瑠璃さんがそのようにお育てになったんでしょうね。とても素晴らしい事だと思います」


爽やかに微笑んだあと、神崎さんは続けた。


「ですが、これからは家の事は民さんにお任せしてもよろしいのではないでしょうか?葵さんには葵さんのやるべき事がありますし」
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