××倶楽部

 キスしたから…………社長と。だけど、そんなこと恥ずかしくて……でも、典には言ってもいいかな。幼なじみだし。



「気をつけろよ。ボケッとしてると車に跳ね飛ばされるからな!」


「う、うん……あの典……」


「それより昨日の大丈夫か? 今朝殴られたとか騒いでただろ、俺はそんなつもりなかったけど」


 典の手が突然私の頬をすっとなぞる。肩がびくっと反応してしまう。

 だって、急に社長と同じ触り方するから……


「だ、だ、だ、大丈夫だよ。痛くなかったから。でも、もう殴らないでよ、バカ典!」


「動揺してんの? ボケ芽依」



 手から逃れようとすると、ふざけた典は調子に乗って私の顔を両手でがっちりと掴んでしまう。


「典、やめて、はなしてぇ」


 顔が近い。典の意地悪な唇、高い鼻筋、意志の強そうな瞳……全部が近い。

 ニヤニヤ笑ってたはずの顔が急に真顔になると黙り込んだ。


「やべ……酔ったかな? 芽依が可愛く見える」


「よ、よ、酔ってるよ。それ絶対酔ってる! 逆立ちしたって私のことなんか女として見れないって典いつも言ってるじゃん!」


 うわぁ! さらに典が近づく。

 私は典の腕をピシピシと叩きながら抗議した。お互いにビールの香りと居酒屋の独特の香りに包まれて、ちょっとおかしくなってるだけだと思う。

 焦点が合わなくなるくらいに近い典の顔。唇まで、あと数センチ。



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