××倶楽部
この好きな気持ち。ずっと赤信号で停めとくのは無理かもしれない。
社長が好き。
今のキスも昨日のキスも、社長にとっては深い意味がないのかもしれない。
だけど、私にとっては大切なキス。
好きな人とした特別なキス。
ロールス・ロイスが優雅に停車した。普通のマンションロビーにこの車はとても似合わなかった。
社長は何も言わずに車を降りた。私も社長の背中を追いかけた。
「ここの三階です。階段で行きましょう」
エレベーターが八階にいたからか、社長は階段を駆け上がる。買い物帰りの主婦が社長に気がついて、その背中に、まあイケメン……と呟いた。
コンクリートの階段を踏みながら、三階につくと社長は迷うことなくハヅキ様の部屋の前に来た。きっと何度か来たことがあるんだろう。
チャイムを三回連続で鳴らす。
反応はない。どこかやっぱりな、と思いながら不安は増殖した。
「ハヅキさん! いらっしゃいませんか?」
社長は力尽くでドアを開けようとドアノブを乱暴に回す。
さすがにまだ明るい時間だけに人目についたのか、さっきの主婦らしき人がお友達とヒソヒソと話ながらこっちを見てた。
「社長、ご近所さんの目につきますから……あまり乱暴なのは……」
社長は、それもそうですね、とため息を吐き出すと、その主婦たちに近寄っていった。