~ Sweet Chocolate ~
日が沈み、月が顔を見せる頃に家路につく。
昼間よりは涼しいが、纏わり付く暑さを流すように自転車を走らせた。
さっさと食事を済ませ、ソファーに寝転び、雑誌を開く。

「あ、ラブセ!読んだら貸してー」
「はいはい。明日、松竹行くんやろ?団扇とか服装とか用意出来とん?」
「団扇は出来てんけどな、服装決まらんねん!楓ちゃん、コーディネートして!」

2年下の妹の咲良(サクラ)は、僕とは違い、女の子らしい女の子。
花柄やらリボンが良く似合う。
本間に、妹なんやろかと疑う時もある位に真逆やけど、頼って呉れたり、信頼して呉れてる部分には本間感謝してる。
咲良が妹で良かったなーて、感じる時は多い。

「んな、今から決めよか。朝は時間無いやろし。」
「メイクとかもして呉れる?」
「毎年の事やしな。誰よりも可愛くしたろ!」

楓ちゃん好きー!なんて、抱き付いてくる咲良を連れ、咲良の部屋に向かう。
約2時間位使って、服装を決める咲良は誰よりも可愛く見える。
咲良は咲良で不安を感じてる部分もあるんやろうけど。
自分より可愛い子がラブセを応援してて、自分は一瞬も目に映らんのちゃうかとか。
ファンの子殆どが感じる不安なんやろうな。

「…ちゃん!楓ちゃん!」
「へっ?」

我ながら、間抜けな声が出た。

「ボーッとしてたで?咲良、変?」
「んーん。可愛いに決まってるやん」
「なら、良かったー!」

安心した様子で、鏡前でポーズを決める咲良。
ちょっと阿呆っぽい姿を見ると、姉妹なんやて感じる。

「先、お風呂入り。早めに寝な、明日可愛くならんでー」
「やだー!楓ちゃん、ありがとー。明日もお願いします」
「はーいよ。ちゃんと手入れして寝るんやで」

バタバタと部屋を出て行く咲良を見送り、雑誌を取りに行き、自分の部屋に戻る。
ラブセの好みを再度調べ、明日のメイクや髪型を考える。
目立つ女の子が居たり、カジュアルな子が居たり、清楚な子が居たりするやろうけど、咲良の魅力を引き出す姿を見付けるのが僕の仕事。
ルーズリーフに一通り書き、息抜きの為にお風呂に入る。

「絶対、可愛くする。魅力引き出す。」

湯船に浸かり、呟いた言葉は誰にも届く事なく消えた。

< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop