~ Sweet Chocolate ~
咲良を送り出し、部屋に戻る。
メイク道具やカーラーを直して、ベッドに倒れる。
携帯を確認し、静かに目を閉じる。

「楓、寝んのー?」

聞き慣れた声に、目を開き、身体を起こす。

「来るなら来るで連絡しろって。朝から咲良の事してたから疲れとんのにー」

すまん、すまんと謝りながらベッドに座る従兄弟の遙斗(ハルト)。

「で、何の用?あんたの好きな咲良ならラブセに逢いに行きましたが。」
「あー。駅近くで逢った。可愛くて惚れ直したわー。」

頬を緩ませながら話す遙斗をベッドから突き落とす。

「おまっ…!この綺麗な顔に傷付いたらどないすんねん」
「喧しいわ。で、何の用やねんな。」

再び、ベッドに座り直し、携帯をポケットから取り出す光景を、ボーッと眺める。

「姉貴が、シフト増やせへんかー?て。もう時期、出産やから楓に店任せたいらしい。」
「あー。もう、そんな時期か。引き続きとかもあるんか。明日、店に顔出しする」

おー、頼むわ。と軽く発した後、立ち上がりドアに向かう遙斗を見送る。

「わざわざ、ありがと。暑いし、熱中症とか気ぃ付けてな。」
「お前は、本気のツンデレだな。ま、そんな所も可愛いけどー」
「煩い。さっさと帰れ!」

振り返らず、手だけ振り、部屋から出て行く遙斗。
ベッドに横たわれば、バニラに似た甘い匂いが鼻を掠めた。
涼しい部屋で、甘い匂いに包まれながら目を閉じる。
少し安心して寝れる気がした。
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