~ Sweet Chocolate ~
窓から射し込む夕日で、目を覚ます。
覚めきらない脳内のまま、リビングを目指す。
リビングでは、グッズを並べ、ママに公演の話をする咲良が目に入る。

「おかえり。楽しかった?」
「ただいま!もーね、恰好良かったよ。結人(ユウト)君と握手したり、希望(ノゾム)君が投げキッスして呉れたり!舞台内容は去年と変わらんかったけど、何かね色々と違った!」

興奮気味に話す咲良を見てたら良く解る。
舞台内容が去年と同じでも、一人一人が成長し、違うラブセの姿を見せたんやと。

「これ、楓ちゃんにお礼。楓ちゃん、大輝君好きやろ?団扇と写真。」
「ありがと。大事にするわ。」

団扇と写真を受け取り、ソファーに横たわる。

「あ、明日さ。店行ってくる。葵ちゃん産休みたいで暫くは店任せて呉れるみたいやから。」
「じゃあ、梅田行くん?咲良も付いて行く!」
「手伝って呉れるなら、ええけど。ケーキばっか食べてたらアカンで?」

笑いながら言えば、そんな食いしん坊ちゃうー!なんて騒ぎながら、クッションを抱かしめる咲良を放置し、大輝の写真を眺める。
同い年には思えへん位の童顔さには、毎回驚かされる。
ま、人の事言えへん位、童顔やけど。

「楓ちゃんは、大輝君の何処が好きなん?」
「いきなりどないしたん?」
「ん?気になったから」

何処を好きになった、それを聞かれても答えれへん。
いつの間にか、目で追ったり、雑誌では一番最初に大輝の記事を読んでた。

「んー。じゃあ、逆に聞くけど結人の何処好きになったん?」
「何処やろ…。んー…、全部?」
「好きになる理由も、好きな部分も具体的には解らんってのが答えちゃう?その人の魅力に、いつの間にか惹かれてた。やから、好きになった。ま、恋愛感情かどうかは、人それぞれちゃうけどなー」

一時期、擬似恋愛をした。
大輝を見た時に、恋に落ちた。
今は、ただのファン感覚しか無いけど。
アイドルに恋愛感情を持ってはいけない。
苦しいのは、誰でもない本人やから。
伝える事さえも出来ず、誰にも知られず終わってまうから。
やから、二度とアイドルに恋はしやんと決めた。
舞台も、コンサートも観に行かへん。
自分自身の目で見てしもたら、また感情が芽生えてまいそうやから。
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