甘い唐辛子


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「あぁ、藤成の娘さん。えらく美人になりましたなぁ。」

「お久しぶりです、楓姐さん。ありがとうございます。」

「そちらは?」

「私の婚約者で、海堂維十さんです。次期、海堂の頭になります。」


久しぶりに見た霞澄の笑顔は、作られているもので、全く感情が表れていなかった。
霞澄が俺を手でさしながら、着物姿のババアにそう紹介したら、そのババアは「まぁ…」とか言って俺を見下した目で見てきた。


「海堂?悪いけど、聞いたこと無いわ。」

「では、今後、お見知り置きを。」


軽く頭を下げると、ババアは嫌な笑みを浮かべたままどこかに消えて行った。


霞澄はそのままたくさんのジジイやババアに挨拶して回る。
俺も、知り合いに霞澄を紹介したりしたが、皆、霞澄の知り合いだった。

俺がこの世界でどれだけ小さいか、霞澄がこの世界でどれだけ大きいかが、嫌と言う程にわかった。
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