甘い唐辛子
維十や虎太郎と玄関で話していると
「霞澄……」
少ししか離れていなかったのに、とても懐かしく感じる、低く威厳があるが、どこか優しい声が聞こえてきた。
急いで廊下の方を向くと、思った通り、着物姿のお父さんがいた。
「おとう…親父、お久しぶりです。」
「今はいい。久しぶりだな。元気そうで何よりだ。上手くやっていけてるか?」
「はい。お陰様で。」
お父さんは、私の髪を撫でながら微かに微笑んだ。
きっと、他の組員や海堂の人間がいるからだろう、
笑うことを控え、威厳を保っている。
「海堂、よく来た。まぁ汚い所だが、上がってくれ。」
お父さんは、海堂の組長を真っ直ぐに見据えて言った。
その目に組長が、肩をビクッと上げた所で海堂は藤成の下だと言うことがはっきりした。
「初めまして。海堂の維十と言います。本当ならば婚約の時に挨拶に来るものが、入籍後の今になってしまい、申し訳ありません。」
維十はお父さんに怯む事なく、はっきりとした口調で言い、深々と頭を下げた。
お父さんは、維十のその姿に少し難しい顔をしてから、「あぁ、気にするな。こちらが頼んだことだからな。」と言った。