甘い唐辛子
「この部屋を使ってくだせぇ。親父が用意しやした。隣は若の部屋ですんで…」
海堂の幹部が霞澄を案内する。
その近くに俺と親父はいた。
親父が「あれではまるで、普通の女子高生じゃねぇか…」と呟いたのは、俺しか聞いてないだろう。
―――――
今、俺は親父に言われて、霞澄の部屋に霞澄と2人だけでいる。
部屋を見渡す霞澄の顔が、一瞬曇った。気のせいじゃないかと思うぐらい、一瞬だったが、俺はなぜか確信していた。
「部屋、気に入らないか?」
「え?」
気づいたら普通に喋りかけていた。
座布団に座っている霞澄に、襖に背を任せている俺は低い机を挟んで向かい合っていた。
霞澄は真っ直ぐに俺を見つめ、俺もそれに応えるように見つめ返す。
「いや。別に。」
ぶつかっていた視線は霞澄から反らされ、おそらく、呟くように言われた言葉は嘘だろう……
「家具?それとも壺か?」
霞澄は少しだけ目を見開き、俺を見た。
何か、おかしな事を言ったか?
もしくは、当たっているのか?