たとえどんなに辛いサヨナラが待っていたとしても
正確には酔った勢いじゃなくて、俺が強引に聞き出したんだけど。
姉さんは酔っているから記憶がはっきりしないみたいだ。



姉さんと俺の間では、嘘をつかないという約束がある。
その約束を持ち出せば、何かを聞き出すことなんて簡単だ。
姉さんは絶対に俺との約束を破らない。


それなのに、少しの間でも俺に隠し事をしようとしていたなんて本当に腹が立つ。




「ああ...もう...私のばか。...最悪。」


「そんなに落ち込まなくても誰にも言いふらしたりしませんよ。」


「...よかった。ペーター、大好き。」


「それはどうも。俺も好きですよ。」



誰かに言いふらしたり、姉さんを困らせることは俺の本意ではない。

ただ、俺は。



「...あー、でも、やっぱり笑える。」


「...何がですか。」


「だって、ペーターがチューして、って...。
似合わない。」



...似合わなくて悪かったな。

さっきまで落ち込んでいたかと思ったら。
悲しんだり、笑ったり、忙しい人だな。



< 112 / 221 >

この作品をシェア

pagetop