溺れる唇

「6時に正面玄関ロビーで」

押しつけに近い一方的な約束を、
無視することもできたのだけれど。

私は、じゃ、と立ち上がった裕馬を、
なんとか引き止め、
小さな声で変更を促した。

「6時に終わることなんて、
ほとんど無いわよ」
「じゃあ、7時・・・7時半」
「ちょっと待っ」

行く、なんて言ってないのに。

勝手に待ち合わせをすると決めて。


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