溺れる唇
「やめろよ」
俺が言うと、タケは挑戦的な目をして言う。
「先月から付き合ってるらしいから、
もう毎日ヤリまくり」
「やめろって!」
下卑た仕草をして見せながら言うのを
遮ると、タケの目に狂暴さが宿った。
「なんだよ」
ケンカを売る調子ですごむのが
15cmも下からだと、
俺の心にも余裕がある。
背が伸びて良かったと思う
数少ない点のひとつは、
こんな風に絡まれても
動揺することが少なくなったことだ。
「やめろって言ってるんだよ」
「別にいーだろ」
吐き捨てながらも、
金髪に近いほど明るく染めた
髪の間から見えるタケの目は、
キョロキョロと不安げに左右に泳ぎ、
こっちを見てはいない。