一緒に暮らそう
「就職活動の方はどう?」
 新多が話を変える。

「なかなか厳しいですよね、今のご時世。料理関係の仕事を探しているんですけど、こんなにいっぱい飲食店がある街なのに、なかなか私でも応募できそうな求人はないですね。やっぱりちゃんと調理師免許取っておけば良かったなって思います。資格があればかなりつぶしが利きますから」
「ああ、専門学校へ行ってたんだよね」
 新多はあの夜、紗恵が話してくれた身の上話を思い出した。
「ええ。退学しないでちゃんと続けてたら、レストランとか働き口を紹介してもらえるはずだったんですよね」

「そうか。君の専門は? ほれ、ああいう学校は中華とか製菓とか専門が分かれているじゃない?」
「あの時は洋食を勉強していました。フレンチとかイタリアンとか、洋食一般です」
「君はいつも和食を作る方が多いじゃないか」
「そりゃ、私だって料理人の端くれだもの。なんだって作りますよ」
「へえ、そりゃあ大したものだな」
 新多が感心する。
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