携帯電話をめぐる狂気
女はとっさに、もう一度走り出した。
体力はあまり残っていない。
隠れられる場所を探していると、近くの倉庫の扉が少しだけ開いているのを発見した。
一瞬、躊躇したものの、すぐに倉庫の中に入り込む。
扉を閉めようと手をかけたが、大きな引き戸は重く、女の力では動かなかった。
仕方なく扉のことは諦め、なるべく隅に隠れ、音をたてないようにじっとしている。
静まり返った倉庫の中に、女の荒い呼吸の音が反響する。
壁一枚隔てた外から、男性の怒鳴り声が聞こえ、女は息をのんだ。