携帯電話をめぐる狂気
男性は何事かを叫びながら、外を歩き回っているようだった。
時々声が大きく聞こえたり、離れて聞こえたりする。
女はその場にうずくまり、先程通話を切ってしまった携帯を操作して、もう一度友人の男に電話をかけた。
コールが鳴るその音でさえ、周りに鳴り響いているのではないかと不安になる。
ふと、急に声が近くで聞こえ、女は思わず体を縮こまらせた。
電話をかけた相手は、通話に出ないままだ。
そして、声が、唐突に、止んだ。
女が疑問に思い、おそるおそる扉のほうに目を向けると、
青いシャツをまとった男が、扉に両手をかけ、扉を開けようとしていた。
『ここにいたんだ』
男は、そう言って、笑った。