愛するということ
「瞬、ちょっと話があるんだ。明後日、退院だから、その前にお前に知らせないといけない・・・」


「・・・うん」




突然変わった、部屋の空気に瞬は少しおびえているようにも見えた。


「お前に、黙ってたことがあって――」


そこまで言って、拓馬はフーッと大きく息を吐いた。


「母さんのことなんだ。お前と一緒に車に乗ってた母さんは、助からなかった。即死だった。」


「えっ・・・」

「それから、お前がいつ意識が戻るのか分からなかったから、すでに葬儀も終わってて、もう骨になってる」



瞬は、目をカッと見開いて拓馬の顔を見る。
それから、ギュッと握った手を見て、唇をかみしめた。

たぶん、必死で涙をこらえているんだろう。


「瞬、母さんはお前を守ることに必死だったんだと思うよ。

助け出された時、お前を守るようにお前の上に追いかぶさってたって、警察の人が教えてくれた。


……母さんに助けてもらった命、大事にしないとな」




瞬の頭をポンポンと叩きながら、拓馬も何かをこらえているようだ。
< 103 / 217 >

この作品をシェア

pagetop