愛するということ
瞬は、ギュッと目をつぶって、ブンブンと頭を振ってから、ハッと何かを思い出したように、目を開いた。

「あたし・・・」

「うん、なに?」

「ううん、何でもない。


そっか・・・やっぱり・・・。
何となく、ママのことでみんな何か隠してる気がしてた。親の葬式にも出ないなんて、親不幸過ぎるね。」



無理して笑顔を作ろうとしている瞬が痛々しくて、まっすぐ見れない。




「瞬・・・葬式に出られなかったのは――」

「大丈夫だよ、隼人、分かってる。ただ言ってみただけだよ」

「・・・」

「ごめんね、まだママが死んだって実感ないや。」





瞬はゆっくり目を閉じながら、「ごめん、なんか疲れた」と布団にもぐった。


拓馬が「じゃあな、瞬、ゆっくり眠れよ」と小さく丸まった背中をポンポンと叩いて、外へ出た。







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