親友ときどき上司~熱風注意報~



 そこからの事は一瞬だった。

 瑞希の悲鳴に走り込んできた荘司は、隼人の首を軽々と持ち上げフローリングの床に投げ飛ばした。

 床の上を滑る隼人の体が、観葉植物の鉢をなぎ倒す光景を、瑞希は唖然と見ていた。

 咳き込みながら体を起こした隼人は、近付いて来る荘司に、真っ青な顔で転がるように玄関へ逃げ出す。


「荘司っ!」

 逃げる隼人を追いかけようとした荘司を呼ぶ。

 行かせては駄目だと思った。
 隼人と荘司の力の差は歴然で、これ以上追わせては隼人が危ないと思った。

 追い払ってくれれば充分で、荘司に人を殴らせたくなかった。

 荘司の剣幕は、殴るだけでは済まない程に見えたから―――


 瑞希に呼ばれて足を止めた荘司の向こうで、玄関の扉が閉まる。



 
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