親友ときどき上司~熱風注意報~


「別人ね。入社当時にもどってる。」

 キッチンに立っていた荘司が、クスクスと笑う。

「どうせ、童顔ですよ。そんな事より、勝手にクローゼット漁らないでよね。」

「スッポンポンじゃ可哀想だと思ってー。…そのバスローブ、まだ使っていたのね。」

 荘司の指摘に、着ていたバスローブを見下ろす。

 入社当時に荘司と一緒に携わった作品の1つ。

 シルク素材のバスローブは、何年着ても型くずれする事なく、毎日瑞希を優しく包んでくれていた。

「初めて携わった作品だしね。ちょっとレースが不釣り合いな年齢にはなっちゃったけど。」

「コンセプトは、ちょっと大人のエロカワイイ、だったっけ?すっかり大人が着るとこうなるのね。」

「どうゆう意味よ?ムカつく。」

 ドサリとソファーに座ると、対面式キッチンのカウンター越しに、荘司が笑う。


 何でもない会話をわざとしている荘司に、瑞希は心から感謝した。


 
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