親友ときどき上司~熱風注意報~
「荘司、ありがとう。」
クスクス笑っている荘司に、素直に声をかけると、荘司は笑いを止めて黙り込んだ。
「アタシが挑発したようなもんね。悪かった。」
真剣な眼差しで謝罪する荘司に、それが隼人の前でされたキスの事だと気付き赤面する。
「あ、あれは!会話の流れ状で、荘司が悪い訳じゃ…」
思い出した快感を振り払って言うと、荘司は見た事のない表情になった。
まただ。
こんな表情の荘司は知らない。
瑞希を見つめる琥珀色の瞳が僅かに逸らされ、再び見つめられた時にはいつもの親友だった。
「さっ、コーヒー飲んだら着替えて。」
両手にマグカップを持った荘司は、瑞希へと片方を渡し言った。
「えっ?」
「明日からはホテルに泊まる事にして、この部屋は引っ越した方が良いわ……今夜は、アタシのマンションにおいで。」
「でも…」
「何か問題でも?」
眉間を寄せた親友に、有無を言わせない迫力を感じて、瑞希は頷いた。