親友ときどき上司~熱風注意報~


「あっ!部長!スーツにコーヒー!…俺が脱ぎますから!」

 塚野が慌てて自分のジャケットを脱ぎだすのを、荘司が目で止める。

 しょぼんと落ち込んだ塚野に、

「今度やったら、ミーティング後のコーヒーも禁止するわよ。」

と、ぼそりと呟いた荘司の言葉は、おそらく瑞希と塚野にしか聞こえていなかった。


 益々、萎縮していく塚野に瑞希は苦笑する。

 今回は瑞希だったから良かったものの、片付けたとは言ってもすぐ近くには試作品やサンプルがあるのだから仕方ない。

 一部始終を見ていた他の者も、同じ気持ちの筈だ。

「すみません。気を付けます。…桜田、ごめんな?その…弁償するから。」

「いいよ。次から気を付けてくれれば。」

「俺のジャケットは高いぞ。特注だからな。でも弁償の為に採寸までされるのは面倒なんだけど?」

 瑞希の言葉にかぶせて、ニヤリと笑った荘司が、この件の説教は終了と暗に伝える。

 勿論、弁償もいらないと言う意味だ。

 ほっと肩の力の抜けた塚野は、倒した椅子を起こして座り直す。



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