美女も野獣も。-Bitter,Bitter,Sweet-
「それで、店から出てきたときには彼女のほうはもうヘロヘロ。野獣に腰を抱かれて街の中に消えてったんだってさー」
「へぇ~、すごい」
極力、冷たい態度に取られないように声色だけは興味のある素振りで相づちを打つあたし。
でも気づいているかな中原さん。
野獣と経理の子がバーに入っていくのを見た、というのは、偶然ではなくきっと誰かが2人の後をつけていたからで。
おそらくその人物は、あなたに話をした先輩だということ。
本当は先輩も誰かから聞いた話を中原さんにしただけかもしれないけれど、少なからずあたしは、噂の出所はその先輩だと思う。
「でもさぁ、これだけ野獣、野獣って噂になるくらいだし、きっとテクもすごいんだろうね」
そう考えをまとめると、グロスを塗り終えた中原さんは鏡に向かって甘い嘆息をもらす。
「こっちは遊びだって分かってるんだからさ、割り切って抱いてもらえたりしないのかなぁ。絶対、本気になったりしないから」
「さ、さぁ…どうだろう。交渉次第なんじゃないかな?」
「交渉ねぇ…」
「うん」