tearless【連載中】
『葵?』

「ん?」



午後の授業も終え、みんなが帰り始めた頃。

私も璃琥に逢うため鞄を取ろうと手を伸ばしていた。



『大丈夫?』



また心配そうな顔を見せる結衣に“顔に出てたのかな…”そう思い、笑顔を作る。

璃琥にもよく言われるけど、私ってすぐ顔に出ちゃうらしい…。



「うん、大丈夫…」

『また、何か抱え込んでるんじゃない?』

「心配しすぎ」



笑ってはみたものの、結衣の表情は曇ったままで。

前みたく流してくれる事が少なくなった。



“璃琥と結衣には、隠し事出来ないや…”



ただ2人共聞かないでいてくれるだけ。

私から言うのを待ってるんだ…。



『私の前でまで、無理に笑顔作らないの』

「…ごめん」

『待ってるって言ったでしょ?理由は分からないけど、辛いなら辛いって言いなよ…』



“葵の悲しみも苦しみも、全部ちゃんと受け止めるから”そう付け加えると、ベージュに染まった唇がゆっくり弧を描いた。


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