tearless【連載中】
途端、ブォ~と音を立てて出てきた風は、下に引っ掛けていた制服をユラユラと揺らす。



「早く乾いてよ?」



そう呟くと電気を消して、リビングに戻った。



再びドアを開けると、ソファーに体を沈める璃琥が目に入る。

これから制服が乾くまでどう過ごしたらいいか分からず、ドアを閉めるとそこに背中を預け動けないでいた。



『…葵』



ふと呼ばれた名前に、肩がビクッと上がる。



「な、何…?」



急に緊張してきて、上手く言葉が出ない。

これじゃ、璃琥にバレちゃう…。

そう思うけど、やっぱり体が硬直しちゃって璃琥に近付く事すらままならない。



『冷蔵庫から飲み物持ってきて』

「は?」

『だから、俺喉乾いたの』



それは分かるけど、ここ璃琥の家でしょ?

何で私が…。



『お前も好きなの取っていいから』



そんな私の気持ちなんかお構い無しに、言葉を投げる相変わらずの璃琥に溜息が漏れる。

緊張した私がバカみたいじゃん!!



「冷蔵庫開けるよ?」

『俺、烏龍茶』



結局反論する気にもなれず、私はペットボトルの烏龍茶を2つ取り出すとソファーまで向かった。


 
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