tearless【連載中】
「はい…」



複雑な心境の中、烏龍茶を璃琥の前に突き出すと、ただそれを受け取った。

“ありがとう”とか無い訳?

なんて考えるだけ無駄か…。



『座れば?』



ペットボトルの蓋を開けながら一瞬だけ私に視線を向ける。



L字型ソファーの丁度真ん中辺りに座る璃琥。

足をテーブルに乗せている為、向こう側に行くにはグルッと回らなきゃならない。

かといって、目の前にあるスペースに座れば璃琥の隣になってしまう。



“足を降ろせ!!”



ジッと見つめ念じていると“何やってんだよ?”と右手を引っ張られ強制的に隣へと座らされた。



『俺の隣は嫌とか?』



妖艶な笑みを漏らすと、少しづつ距離を詰めてくる璃琥。

そのまっすぐ私を見つめる瞳に、心臓がバクバク鳴り視線が泳ぐ。

それでも近付く顔に耐えきれず、ギュッと目を瞑ると“分かり易いんだよ、お前”と耳元で囁かれた。

璃琥の吐息が耳にかかり身震いする。



『葵はすぐ顔に出んだな』



ゆっくり目を開けると、目の前にいた璃琥は元の場所に戻り、煙草に手を伸ばしている所だった。


 
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