tearless【連載中】
煙草とアロマの香りが混ざり合う璃琥の匂い。

抵抗する事無く、私はその腕の中に身を預けた。



『俺が忘れさせてやるから』

「なにを?」

『祐樹って奴の事』



本当に璃琥はズルい。

何も言ってないのに、私の心を覗いたみたいに言って欲しい言葉を更っと言っちゃうんだから。



「忘れさせてよ…」



アイツの入り込む隙なんか無くなる位、璃琥で一杯にして…。

そしたらきっと…――。



『お前、冷たい』

「璃琥は温かい」



ギュッと抱きつくと“もう風邪引くなよ?”と璃琥も強く抱きしめてくれた。



ねぇ、璃琥?

本当に、忘れさせてくれるの?

私、また泣けるようになるかな?

嬉しい時も、悲しい時も、泣きたい時に泣ける様になる…?



『腹減った…』

「なんで今そういう事言う訳?」

『うっせーな…。苦手なんだよ、こういうの』



“自分から告白したのも初めてだしな”胸に置いていた顔を上げると、璃琥はばつが悪そうに視線を泳がせていた。

そんな璃琥を見て“フッ”と笑うと“笑ってんじゃねーよ”と不意打ちのキス。



2回目のキスは、煙草の香りがした―……。



 
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