夏の月夜と狐のいろ。
薄暗い地下をすばやくおりていく。
ノエルの腕の中で揺られながらシアンは耳をすませた。
上のほうで、ラシッドの声がかすかに聞えた。
なにやら怒っているらしいことから、自分がいなくなったからだと気づく。
「ノエル・・・ラシッドが気づいたわ。ばれちゃったみたい」
ノエルは困ったような表情をしたが、すぐに笑顔になって言う。
「大丈夫。俺が守るから。」
シアンは安心しきって微笑み返した。
ノエルがいるだけで、あの恐ろしい場所じゃないみたいだ。
しばらくすると広い場所にでた。
そこにはびっしりと牢屋が詰め込まれている。
薄暗い地下室の中、小さく動くものを奥の牢屋にみつけた。
ノエルも気がついたらしくそこへ小走りに向かう。
中には、クロが居た。
クロはシアンに気がつくと赤と青のオッドアイを見開いた。
「お前・・・どうしてここに」
途中までいい、シアンの顔から視線を移し、いつもの睨みつけるような目でノエルを見る。
ノエルは表情を崩さずにクロを見返した。
シアンはあわててクロにノエルのことを紹介する。
「この人はノエル。私の森に居たころの・・・お友達。
助けにきてくれたの。ねぇ、クロもココから逃げよう」
シアンが言うと、クロは考え込むように俯いた。
今はもう隠そうともしていない黒いしっぽが揺れる。
そして、顔をあげるとこう言った。
「僕は行かない。シロを残して出て行けない・・・」