夏の月夜と狐のいろ。
「ぐずぐずしてられない。俺はシアンしか抱えられないけど、クロは歩けるか?」
ノエルはさっきと同じように何かをとなえてクロの牢屋の一部を壊した。
クロもそれを少しだけ驚いて見ていたが、すぐについっと目をそらしながら低い声で答える。
「当たり前だ。僕は一人で歩ける。」
クロが立ち上がり、牢屋から出てくると再びノエルはさっき来た道を逆走しはじめた。
ゆらゆら揺れるので、シアンはぎゅっとノエルの体にしがみついた。
ラシッドの声が、すぐそばで聞える。
同時に、シロの無感情な声も響く。
だが、まだ遠い。
逃げ切れるかもしれない―・・・
そう思ったが、地下階段をのぼりおえた場所まで来たところで
その考えはやぶられた。
「ラシッド様から命令です。とまってください。」
目の前に、半狼の姿のシロが現れた。
ノエルがぴたりと立ち止まる。
「ごめんだけど、そういうわけには行かない。」
ノエルは再び走り出した。
それを見てシロがばっとこちらに飛び掛ってきた。