夏の月夜と狐のいろ。
「・・・っ」
シロの牙がノエルの頬をかすり、小さく切り傷ができた。
そしてノエルが目で追う間も与えずシロは完全に狼の姿になって右足に噛み付いた。
ノエルは苦しげに顔を歪める。
「ノエルっ!!」
シアンが叫ぶとノエルは何でもないように笑って見せた。
「大丈夫だよ、シアン。」
そうってノエルは再び前を向くとシロを睨みつけた。
シロの白を基調としたふわふわの毛が輝く。
狼の姿のシロもまた、無表情だ。
「とまってください。次は、殺します」
シロの赤い瞳が冷たくきらりと光った。
シアンは不安になってノエルを見上げる。
―お願い、動かないで!
自分が死ぬよりもノエルが死ぬほうがもっと嫌だ。
けれどノエルはこちらを向かずにクロのほうを向いた。
クロは、ノエルと目をあわせると頷いた。
何か作戦があるらしい。
何だろうとクロとノエルを交互に見ていると、クロが足を踏み出した。
その瞬間、きらりとシロの瞳が光りシロはクロに飛びつこうと身をかがめた。
「危ないっ・・・!」
シアンの心臓が、恐怖で震えた。