夏の月夜と狐のいろ。
「大丈夫、だよ・・・心配しないで・・・」
ノエルは薄く微笑む。
その表情には余裕がない。
シアンはちっとも安心できなかった。
シアンは痛む体を無理やりおこすと、抱えられていたノエルの腕から立ち上がった。
「シアン・・・?だめだよ、怪我をしてるんだから・・・うっ」
ノエルは焦ったようにそこまで言って、どさりと両膝と両手を地面について顔を歪めた。
横から、クロが傷口の様子を眺めている。
シアンは無理して手足を振って見せた。
「大丈夫よ、ノエル!私たちは人間よりも少し頑丈だから!
私が今度はノエルを助けるよ」
けれど、次の瞬間後ろから嫌な声が響いた。
「傷だらけのお前が誰を助けるって?子狐」
―大嫌いな、声。
憎悪と恐怖がシアンの体に広がった。