オレンジどうろ
彼の姿に全員が驚いた。
「兵庫から引っ越してきました、平田ユウガです!10年前はこっちいたけど、大人の事情で兵庫行ってまた帰ってきました!」「ニャア」
どこにでもある自己紹介の後にニャア。
なぜかニャア。
彼の腕の中にいるのはニャア...じゃなくて、猫!?
感想はみんなバラバラで、笑ってる人もいれば、可愛いと連呼してる人もいる。
「平田ぁあ!猫を返してこいっ!」
先生に怒られてしょぼん、とした平田くんは先生にちらり、と視線を流す。
「ニャア子ー、俺ら離れ離れになるんだってよ...。いや、そんな悲しむなって。俺だって辛いよ...」「ニァア」
しくしく、と背中を震わす平田くんに皆が慰めの言葉をかける。先生もつられそうになったが、思い留まって深呼吸をした。
「知るかバカもんが!早く行け!」
平田くんはブー、といいながら教室を出た。
「あいつすっげぇおもしれぇ!」
「なんかイケメンじゃない?」
「髪の横にヘアピン付けてて可愛かったっ」
みんなの会話の中心人物は平田くんで持ちきり。
5分くらいして平田くんは帰ってきた。
「じゃあ、平田は学級委員長の隣行け」
先生は私の隣の空席を指差した。
「放課後は、あいつが案内するからな」
私をあいつ呼ばわりしながら今日のことを先生は話した。