絶対にみちゃダメ!
「約束なんか、してないよ」

 でも、しっかりにぎってくる力強い男の子の手に、あたしは思わず赤くなって振り払った。



 なんで雅がそんなにあたしを欲しがるのかわからない。

 別に、あたしって、普通の貧乏な女の子だから、特別魅力的に見えるってことは無いと思う。

 貧乏人は未知の生物で、面白いんだろうか。



「……小町って強情だね。俺がこんなに求めてるのに、何でだよ」

 ふう、と雅が小さくため息をついた。



 う……。

 なんでコイツはこういうクサイ事ばっかり言うんだろうか。

 タチが悪いったらありゃしない。

 まるであたしが悪いみたいな気分にさせられるんだ。

「だって、雅……女の子の格好なんだもん」

 あたしはしどろもどろに適当な言い訳をした。

 目の前に居る雅は、チャイナドレスに身を包み、お化粧もきれいにして、どこからみても美女そのものだった。

 どういうわけか胸までしっかり飛び出しているし。

「……そうだった」

 雅が自分の格好を思い出したように眺め始めた。




「女って面倒くさい生き物だよね。俺、男でよかったよ」

 この台詞で、雅は別に女の子に生まれたかったから女装しているわけではないことを知った。


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