絶対にみちゃダメ!
「雅の女装って趣味じゃなかったの?」

 なんだろうと思っていたけど、趣味だと決め付けていた……というか、決め付けていたかった。

 じゃないと説明がつかないんだもん。

「んなわけないでしょう。女なんてキライだ」

 不機嫌そうに雅が眉を寄せた。

 あたしは思わずカチンとした。

「あたしだって女ですけど!」

 あんなことしたくせに。

 雅があんなことするからあたしは自分が女で、雅が男だって嫌って言うほど意識する羽目になった。

「あー……小町は特別。ごめん、怒らないでって」

 雅がなだめるように、あたしの頬を撫でる。

 お化粧が落ちるっての!



「キスぐらいは許して。化粧は後で直せばいいでしょう?」

 すいっと無駄のない動きで肩を引き寄せられ、抵抗するまもなく唇をふさがれた。

 こういうのはすごく手慣れているように感じるのに。



 女の子とキスしてる気分で凄く変な感じだった。

 でも、もう雅の事は女の子だなんて米粒ほども、いや、ミジンコほども思っていない。

 やっぱり、あたしにとって雅は男の子以外の何物でもなかった。



「ちょっと、長いよ!」

 いつまでも離れようとしない雅の胸を押し返した。

 やっぱり不思議に柔らかくて本物みたいだった。

 一体どういう仕掛けになってるんだか。

 でも聞いてみる気持ちになんかならなかった。


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