絶対にみちゃダメ!
 慣れた様子で涼しい表情をしている雅を見ていると、やっぱりコイツもお坊ちゃんなんだと思う。

 とりあえず、一緒にいてくれて助かる。

 手をつながれていることは、さっきのキス一回分、我慢しよう。




 会場はかなり広い。

 あたしたちと同じぐらいの人たちも多いけど、それよりもっと年齢が上の人の方が圧倒的に多かった。

 皆綺麗にドレスアップしているのはモチロン。

 雅はその中でも引けをとらない。

「ほら、小町。あっちを見てよ。東雲のじーさまがいるわ」

 雅は女の子の口調で濃くて長いまつげをしばたたかせながら、こっそり指で一方向を示す。

 なんだか人だかりがあるなあってぐらいで、よく分からなかった。

 そのじーさまとやらは人ごみの奥にいるんだろうか。




 偉い人に会うのは気が引けるけど、一応あたしは東雲学院の特待生。

 虎のじーさまといえばおじいちゃん、つまりその人は、学院理事長のはずだった。

 虎の婚約者として紹介されるのは真っ平ゴメンだけど、挨拶ぐらいはしなきゃいけないのかな。




 そういえば虎はどこにいるんだろう。

 来たことを告げないと、きっと後で騒ぐと思う。

 あたしは人ごみの中、キョロキョロ辺りを見回した。

 人が多すぎて、何がなにやらさっぱりだった。


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