絶対にみちゃダメ!
「食べにいってきたら?」

 飢えた狼みたいに瞳をきらめかす雅に呆れたため息をこぼしながら、勧めてみる。

 とはいっても、もう既に雅はワゴンで運ばれてくるお料理たちに目も心奪われているみたい。

 ここまでえもいわれぬいい香りが漂ってきている。




 もともと、雅の目的はごちそうだもんね。

 虎から招待状をふんだくったとき、そう言ってた。

 育ちのいい雅は御飯なんかに困ったことないだろうに。

 この旺盛な食欲は一体どこから来るんだろう。

 っていうか、雅って自分の欲求に素直だよね。

 あたしを求めてくるときも、ストレートだし……。




「小町も行こうよ」

「あたしはいいって」

 とりあえず先に虎に挨拶を済ませておきたかった。

 そうじゃないと落ち着いてせっかくのお料理の味も分からない。

 一言声を掛ければ、多分虎は気が済むはず。




 というか……あたりを見渡す限り人、人、人。

 この人たちが全員、虎のお祝いに駆けつけてきているわけだから、あたしなんかと話す暇はないと思う。

 まあ、あたしにしてみれば、もっけの幸いだった。

 面倒くさいことが簡単に済むならちょうどいいもんね。

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