想 sougetu 月
 不安そうにシイナを見ると、嬉しそうな笑顔が向けられる。

「徹雄と一緒にいるのが他の女なら嫌だけど、月子ならいいよ。逆にいい虫除けになってくれそうで助かるかも」

 以前、シイナがバイトが終わるまで時間をつぶしている川崎君がよくナンパされるって話を聞いたことがあった。
 もしかしてそれが嫌なのだろうか?

「じゃあ、駅周辺の不動産屋さんを回りきったらお願いしてもいいかな? あ、出来るだけ早く見つけるから!」
「あはは、いいよ。自分が住む場所なんだから時間がかかっても、ちゃんと納得した場所に決めなよ」
「あ、あと、最近はインターネット閲覧からの専用の物件とかもあるぜ」
「インターネット?」
「そ」

 インターネットと聞いて納得してしまう。
 Web専用物件なんて意外とありそうだ。

 私はパソコンを持っていないが、斎が貸してくれる。

 来月は斎の誕生日だ。
 不動産屋さんを回りながら、斎へのプレゼントも探しているのでどうしても時間が少ない。

 しかもプレゼントは2つ。

 1つは斎の誕生日である10月2日に渡すプレゼント。
 もう1つは私と斎の真ん中の日にプレゼント交換するプレゼントだ。

 それぞれの誕生日は家族や友人が祝ってくれる。
 でも、2人の真ん中の日、10月22日は真ん中誕生日として、2人だけでお祝いをするのだ。

 これは私が青柳家に来た年から続いている2人だけの行事だった。

 真ん中誕生日にはルールがあって、プレゼントの予算は500円まで、それでいかに相手を驚かせるか競っているのだ。
 それを大人になった今でも守っている。

 高価なプレゼントはそれぞれの誕生日にプレゼントすればいいから。

 いつも頭を悩ませるのが真ん中誕生日のプレゼントだ。

 色んなお店を回っても、なかなかこれってものが見つからない。
 こっちのタイムリミットは物件よりも切迫している。

 私は読みかけの情報誌をなにげなくぱらぱらとめくっていた。
 
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