想 sougetu 月
 真ん中誕生日も今回が最後。

 相談もなく家を出ることを決めて、ぎりぎりまで話さなかった私を斎は怒るだろう。
 もしかしたら許してくれないかもしれない。

 それでも届かぬ想いに胸を焦がす恋は終わらせなくてはいけないから……。

 斎に出会ってから……、ううん、この青柳家に来てから私は守られてきた。

 それは家族としてだけれど、そういう意味で私は斎の特別な女の子だ。
 どんな女の子よりも近くて、大切に守られてきた。

 でも斎には別な意味の特別な女の子が現れた。
 家族よりも大切な存在が出来ることはごく普通のこと。

 いずれ私よりその女の子を守るようになる。

 ただ……私がそれを見たくないだけ……。

「このケーキを食べると誕生日が来たって感じがするよ」
「斎は真ん中誕生日にしかこのケーキにしないからだよ。移転でお店が少し遠くなっちゃったからあんまり食べられなくなっちゃったけど、私は誕生日じゃなくてもこのケーキ食べてるもん」
「誕生日ケーキのイメージが定着したからな。誕生日以外で食べる気がしないんだよ」

 他のショートケーキと比べて少し甘さ控えめな真っ白なケーキ。
 上にのったイチゴが宝石のように輝いている。
 
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