想 sougetu 月
「月子」
「ん?」

 名前を呼ばれて顔を上げると斎の指が私の顔に触れた。

「ガキ」

 呆れた顔の斎。
 離れた指には真っ白な生クリームがついている。

 口の横についた生クリームを斎の指が拭ったらしい。

 触れられたことを意識すると、触れられた場所が熱を持ち始め、与えられる優しさが私の鼓動を早くする。

 そんなに簡単に触れないでほしい。
 だって、私は斎に触れることが出来ない。

 触れたいと思うのに、手を伸ばすことは許されない存在なのだから。

 胸が息苦しいほど痛む。
 だから私は笑う。

 この痛みが懐かしいと思える時が来る日を想って……。
 
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