想 sougetu 月
 候補の物件が見つかったと言っても、まだ契約が終わったわけじゃない。
 私が気に入っても、両親が気に入らない場合がある。

 引き続き物件を探して、私は斎のノートパソコンで物件を見ていた時。

 荒々しく玄関のドアを開け閉めする音がして、階段を上がって来る音がしたかと思うと、ノックもなく突然ドアが開かれ斎が立っていた。

 今日、おば様はおじ様と一緒に出張で帰って来ない。
 当然食事当番の斎は学校が終わるとそのまま夕食の買い物をしてくる。

 いつもならこんな早く戻ってくることはない。

 ノックもせず返事をしていないのにドアを開けたことや、無表情で私を見る斎に不安がこみ上げてきて心臓の鼓動が早くなっていく。

 斎がどんなに怒っている時でも、不機嫌でも、私には感情をあらわにする。
 それなのに感情がみあたらない。

 一瞬、出張中のおば様達に何かあったのかと思った。

「ど、どうしたの?」
「……この間、買い物に行っていたって言ってた時、1人じゃなかったのか?」
「この間?」

 まったく感情の感じられない冷たい声。
 突然言われた言葉が理解出来ずに聞き返してしまう。

「真ん中誕生日の材料を買いに行ってた時、一緒に誰かといたのかって聞いてるんだ」
「あ……」

 やっと聞かれている質問が理解できて、その言葉の意味に困ってしまう。

 あの日一緒にいたのは川崎君だ。
 シイナとは会ってもいない。
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