想 sougetu 月
「そいつと今日一緒にいたのか」

 疑問系じゃない。
 確信あっての言葉だった。

「あ、あのね……。でも今日はシイナも……」
「今日は?」

 シイナも一緒だったと言う途中で言葉尻を取られてしまう。

 斎の表情が無表情から冷たいものへと変わる。
 それを見て、私は自分の言葉が斎の言葉を肯定してしまったことに気づいた。

「ち、違う……」
「違う? どう違う? 嘘はついてないが正直に話していなかったってことだろう?」
「誤解だよ!」

 泣きたい気持ちで首を振って誤解を解こうとした時だった。

 焦って動いたせいでひじがノートパソコンにぶつかり、ノートパソコンはそのまま横すべりに机から下へ音を立てて落下。
 その時、机の上に置いてあった情報誌や、不動産屋さんでもらった物件のコピーも巻きこんで机の上からすべり落ち部屋に舞う。

 慌てて手を伸ばしても、紙切れ1枚が重なっているだけの物件情報用紙が部屋に散乱することを止めることが出来なかった。

 斎は足元にすべり込んできた用紙を無言で1枚拾う。

「……」

 手に取った紙に視線を落とし、次に机の下に落ちている情報誌に、そして最後に私が触っていたノートパソコンの画面に視線が移る。

「これ、何?」
「……」

 斎は手に持っていた紙を私に見えるように向けた。

 頭のいい斎のこと。
 もうわかっているはずなのに、わざと私に聞いてくる。
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